2018年10月31日水曜日

クイズパズル迷路本

確か小学四年生の頃だったか、12月最後の学級活動の時間でクリスマス会をやることになった。学級会での話合いの結果、教室でフルーツバスケットやら何やら遊んで、最後にプレゼント交換(*1)をする、というプログラムが決まった。
そうと決まればプレゼントを用意しなければならない。考えた結果、私は手作りの問題集を作ることにした。そのタイトルが「クイズパズル迷路本」略してQPMB(Quiz Puzzle Maze Book)である。コピー用紙を切って鉛筆で問題を書き、セロハンテープで冊子状にした大作だ。「クイズパズル迷路本」の通り、以下の内容から構成されていた。
クイズ: 漢字の読み取り(*2)。国語辞典(*3)をめくって、「単語は知っているが読み方はわからない」もの(*4)を発見してはメモし、難易度順に並べたもの。
パズル: 紙をハサミで切って作ったジグソー風パズル。袋とじを開けるとピースが出てくる。
迷路: 迷路。「ゴール」と見せかけた「ゴフレ」があるというトラップが特徴(*5)。
「問題数25問以上!」がウリだった。ただし、ほとんどが漢字の読み取り問題である。私はこの冊子をプレゼント交換の場に並べ、そしてそれは誰かに持って帰られた。それと交換に、誰かの手作りの飛び出るメッセージカードを受け取った。ちなみに、この場に手作りの問題集を用意した者は他にもいる。私が特に親しくしていた友人Iである。

クイズパズル迷路本vol.1が好評だったか不評だったかは不明だが、私はこの「プレゼントに問題集をあげる」という発想をいたく気に入って、続巻を色々作って前述の友人Iなどに贈っていった。巻を重ねるごとに問題の数とバリエーションは増加していき、内容も洗練されていった。特に国語辞典を駆使して作り上げたクロスワードは力作だった。他の内容はあまり覚えていないが、思いつく限りのギミックを詰め込んで作るのはとにかく楽しかった。学校の時間割に沿って教科にちなんだクイズに答えていくスピンオフ「クイズパズル迷路本 学校編」も作った。
そうして6年生になった。6年生の頃の思い出の一つが、「無人島ライフ」である。「無人島ライフ」は、私の友人Uが著した、無人島に漂着した主人公のサバイバル生活をコメディタッチで描いた小説である。「夏だ!海だ!遭難だ!」の書き出しと、主人公のペットの鳥の名前「島無(しまなし)」は今でも覚えている。この小説が特異だったのはその連載形態だ。教室の後ろに「先生の本棚」として先生オススメの本が並べられたコーナーがあったのだが、突如としてそこに「無人島ライフ」第1巻が追加されたのである。Uが自分で書いた本を勝手に並べたのだった。こうして衝撃の文壇デビューを飾った「無人島ライフ」は、(少なくとも私からは)好評を博し、先生の本棚に勝手に続巻が追加されていく形でその後も連載が継続された。そして、これに影響された私も「クイズパズル迷路本」の新作を作って先生の本棚に並べた。確かIも自作の本を並べたので、先生の本棚は最終的に無法地帯になってしまった。
6年生の最後には、「クイズパズル迷路本 永久保存版」と題して、今までの集大成となる最終作を制作しIにあげた。私とIは4月から別々の中学に通うのであった。こうしてクイズパズル迷路本は思い出の1ページにしまわれた。

しかし、クイズパズル迷路本は決して過去のものではない。私は今でも時々クロスワードを作る(*6)が、そのルーツはクイズパズル迷路本にある。QPMBの精神は、確かに今も私の中に存在しているのだ。

(*1)プレゼント交換は、椅子取りゲームの要領で次のようにして行った。
1, 各々がプレゼントを持ち寄る。
2. 椅子を円形に並べ、各椅子に一つプレゼントを置く。
3. 音楽と共に椅子の周りを回る。
4. 先生が適当に音楽を止める。進行を停止し、そこにあるプレゼントを受け取る。
(*2)恐らく、TV番組「ネプリーグ」の影響だと思う。
(*3)この国語辞典は、私の思い出の一冊「福武国語辞典」だ。ベネッセがまだ福武書店だった頃に作っていた大人用の辞書である。3年生の頃父から譲り受けた。私はこれを気に入ってよく読んでいた。夏休みの課題の一つに自分の夏休み中の生活について書く「生活作文」があったが、ある年はそのテーマをこの辞典にしたほどだ。国語辞典での遊び方にも色々あるが、中でも一番気に入っていたものは「国語のワークで漢字の書き取り問題(例: ききゅう→気球)があった時、同音異義語を調べてなるべく変な言葉を書いて提出する(例: ききゅう→危急)」という遊びだ。
(*4)鋏(ハサミ)、膃肭臍(オットセイ)、阿弥陀籤(あみだくじ)など。
(*5)小学校の頃の私は、紙を曲げて解く迷路など、ひねくれた作風の迷路を大量に作っていた。
(*6)「年賀状録: 2016-2018」など。

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