2018年10月25日木曜日

笑いの分析(1)

昨日の記事を踏まえて、好きな漫画や書籍を12作品挙げて(記憶と感覚に従って)分析しようと思う。各要素の強さを1~5の5段階で表す。パロディはあっても気付かないので除外する。なお、点数の合計が高いほどお気に入りの作品とは限らない。

(1)「不思議なソメラちゃん」(ちょぼらうにょぽみ)
・論理5 知識2 表現2 暴力5 皮肉1 不条理5
・下ネタ4 差別1
最大の特徴は不条理だが、この作品は単に意味不明なだけでは終わらない。ストーリーを不条理へとドライブする主人公のいかれた論理と、何のためらいもなく先生に薬物を吸わせようとしたり友人をウナギのタレの底に沈めようとする暴力性が、不条理を強烈な面白さに昇華しているのである。

(2)「キルミーベイベー」(カヅホ)
・論理3 知識1 表現1 暴力5 皮肉1 不条理2
・下ネタ1 差別1
殴る、蹴る、絞める、関節技をかけるなど、直接的な暴力が目立つ暴力にストイックな漫画である。暴力が面白いのはもちろんだが、やすなの煽りは地味に高度な論理が使われている。自分のことを棚にあげてソーニャにマジレスするシーンなどはその真骨頂だろう。

(3)「山本アットホーム」(山本アットホーム)
・論理5 知識5 表現5 暴力5 皮肉4 不条理5
・下ネタ1 差別1
この漫画はすごい。好きな要素がひたすら詰め込まれている。一読して衝撃を覚えた。これだけ見れば一番好きな漫画といえそうなところだが、帰宅部活動記録の方が好きである。ほぼ全ページに渡って好きな要素てんこ盛りではあるのだが、それが笑いに結びつかないページもたまにある。ツッコミの弱さが原因だろうか。自分の感覚がよくわからない。

(4)「かぐや様は告らせたい」(赤坂アカ)
・論理3 知識4 表現2 暴力1 皮肉1 不条理1
・下ネタ4 差別1
初期は頭脳戦要素が強かったが、その要素は次第に薄れていった。とはいえ、作者の教養を感じさせるギャグは依然ちらほらとある。あと、全体的に構成が上手い。初期以外はギャグというよりラブコメなので、このテンプレに当てはめて評するのは難しい。別の観点を持ち出すことが必要だろう。

(5)「帰宅部活動記録」(くろは)
・論理4 知識5 表現4 暴力3 皮肉2 不条理1
・下ネタ2 差別1
国語の教科書、しりとり、瀉血手術図といった他に類を見ない題材を扱い、独創的なギャグ漫画に仕立て上げた傑作である。革新的な面白さを常に模索しながら生きる桜先輩の在り方には、"攻めの姿勢"で生きるとはどういうことなのかを教えてもらったような思いだ。エッジの効いたギャグの中に人生哲学が感じられる作品と言える。

(6)「われ大いに笑う、ゆえにわれ笑う」(土屋賢二)
・論理5 知識2 表現5 暴力1 皮肉1 不条理1
・下ネタ1 差別4
土屋賢二のエッセイに共通するのが、圧倒的な捻くれっぷりと他の追随を許さない最高の屁理屈である。さすがは論理に敏感な哲学者、と感嘆せざるを得ない。その中でも、特にネタの切れ味が鋭いのがこの一冊である。ただし、腹がよじれるほど面白かった一方で、現代の(ポリコレ的な)視点から見れば女性差別なのではと思われるエッセイもある。

(続く)

0 件のコメント: