2018年10月18日木曜日

私の院試体験(11)

・8月21日(1)
目が覚めた。アラームは鳴っていない。時計を確認すると、まだ5時過ぎだった。二度寝しても大丈夫だ。私は再び目を閉じた。
ところが、もう一度眠ることはできなかった。お腹が空いているのかと思い、昨日コンビニで買っておいたパンをもしゃもしゃ食べ、歯を磨いた上で横になったが、やはり眠ることができない。仕方がないので、しばらくきららファンタジアやTwitterをした。
1時間ほど経った。私はこの乙宅でもう一度寝ることを諦め、早めに出発しておくことに決めた。ここでは乙がまだ寝ていて電気を付けることができないが、京大に着けばどこか勉強できる場所があるはずだ。準備を整え、甲の自転車に乗って試験会場へと出発した。
試験会場がある建物に着いたのは7時半頃だった。早速試験が行われる大教室に入ろうとしたが、扉は鍵がかかっていた。扉の手前には長椅子が並んでいた。合計20人分ほどはあるだろうか。どうやらここが待機場所らしい。試験は9時からであり、あまりにも早く到着したため、まだ周りには誰もいなかった。私は椅子に座って、物性化学の教科書を開いた。ところが、緊張のせいか内容が頭に入ってこない。私は教科書を閉じ、鞄にしまった。Take it easy, 大丈夫、大丈夫。そう自分に言い聞かせながらも、試験会場の前で開始時刻を待つ私の胸中は不安3割、眠気7割であった。周りに誰もいないのをいいことに、私は靴を脱ぎ、鞄を枕がわりに使いつつ、長椅子に横になって目を閉じた。私は自分の意識の管理を放棄した。
しばらくして、辺りで声がするのに気が付いた。私は慌てて起き上がった。見ると、合計10人に満たないくらいだっただろうか、何人か受験生らしき人が椅子に座っている(*1)。しまった、起きるときに慌てて変な声を出してしまった。確実に聞こえていただろう。これはかなり恥ずかしい。穴があったら入りたかったが、穴がないので入らない。ない穴は振れないのだ。代わりにトイレで用を足した。
時間を確認すると、8時10分ほどだった。私はきちんと座り直し、教科書を再び取り出して真面目に読み始めた。それからはどんどん人が増えていき、待機場所も随分賑やかになった。全員アウェー(*2)だった一昨日と違って、今回はここをホームグラウンドとしている受験生が多数派である。あのときは受験生同士の会話がほとんどなく(*3)待合室には独特の緊張感があったが、今日はみんな普段の友達と普段のように喋って(*4)リラックスしているように見えた。私は、これがアウェーの戦いであることを改めて意識した。
しばらくすると試験室のドアが開いた。時は来た。いよいよ試験開始である。(続く)

(*1)私と同じ椅子には誰も座っていなかった。
(*2)試験官さえアウェーなのだからすごい。
(*3)ゼロではなかった。私は、試験開始を待つ間、後ろに座っていた人に「レポート何書きました?」と聞いてみた。すると、「関数解析について書きました」と返ってきた。へえー。聞いてみて、別に興味がなかったことがわかった。私の後ろにいた人には大変申し訳ない。この場を借りてお詫び申し上げたい。
(*4)少し聞き耳を立ててみた。「第一志望の研究室落ちたら桂キャンパスなんやけど......桂はいややなあ」という発言が印象に残った。

リンク:
「私の院試体験」目次

0 件のコメント: