2018年10月26日金曜日

笑いの分析(2)

(7)「ゆゆ式」(三上小又)
・論理3 知識4 表現5 暴力3 皮肉1 不条理1
・下ネタ3 差別1
ギャグ漫画というより日常系であり、またしてもこのフォーマットには載りきらないのだが、敢えて数字にすればこんな感じになるだろうか。読んで笑えるという観点に限っても、妙な心理戦、(特にゆずこへの)鋭い制裁、検索結果の豆知識から発展するふざけの入ったやりとりなど、味わい深い点が多い。「チネラスカ州」のように、言葉遊びから教養ネタに発展するものが特に好みである。

(8)「有害指定同級生」(くろは)
・論理5 知識4 表現5 暴力2 皮肉4 不条理1
・下ネタ5 差別1
ド下ネタの連発であるが、この作品は面白かった。それは下ネタを連発する都城さんのスタンスにある。彼女は社会の常識を、淫らであってはならないという常識をぶち破るために下ネタを言っているのだ。下品ではあるが、面白さの核心は下品さに包まれた高度な論理性にあると思う。「援助交際をしていると見せかけるためにお小遣いで高級な財布を買う」くだりはもはや痛快である。

(9)「鬱ごはん」(施川ユウキ)
・論理2 知識3 表現4 暴力1 皮肉5 不条理1
・下ネタ1 差別1
食に興味のない一人暮らしの男が鬱々とご飯を食べるという漫画である。テレビなどで見る食レポでは芸能人がご飯を美味しそうに食べているが、この漫画の主人公は徹底的に不味そうに食べる。第一話から、豚焼肉定食を見て「堕ちていく飛行機で出される機内食だ」と評する始末だ。その皮肉がこもった独特の表現が笑える。

(10)「うさかめ」(ルーツ・桐沢十三)
・論理2 知識2 表現5 暴力1 皮肉1 不条理2
・下ネタ2 差別1
テニス部4人の日常を描く、日常系とギャグの合いの子とでもいうべき作品だ。田中きな子の妙ちくりんな言い回しが最高である。派手さがなくてかなり評しにくいので、リンクを貼っておく。

(11)「よいこの君主論」(架神恭介・辰巳一世)
・論理5 知識5 表現4 暴力4 皮肉4 不条理3
・下ネタ1 差別1
マキャベリの「君主論」を、子供達にも読みやすいストーリー仕立ての学習書にした......という体を取り、ひろしくんがリーダーとしてクラスを制圧する覇道ストーリーを展開する無茶苦茶な内容の本である。「君主論」ベースの知識ネタ、異常な人間で構成された異常なクラス、解説パートのはなこちゃんの暴力的な思想など、語るべき点は枚挙にいとまがないが、こういう本を作ろうと思ったこと自体、論理5に値する偉業である。

(12)「完全教祖マニュアル」(架神恭介・辰巳一世)
・論理5 知識5 表現5 暴力1 皮肉5 不条理1
・下ネタ1 差別1
過去に興った宗教の歴史を解説しつつ、新興宗教の教祖として大成するにはどうすればよいかをマニュアルとしてまとめたという、これまた無茶苦茶な本である。文体には皮肉とふざけが散りばめられているが、それは著者たちの知識に裏打ちされた皮肉とふざけであり、一級品の笑いだけでなくちゃんとした知識も与えてくれる点に著者たちの力量を感じる。

(終わり)

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