2018年10月12日金曜日

私の院試体験(5)

・8月上旬
院試勉強の影の功労者が、fire HD 8である。このfireに過去問のpdfをダウンロードしておけば、 紙に印刷する必要もパソコンを机に広げる必要もない。紙の場合、私はよくプリントを紛失するので非効率になっていただろう。コンパクトながらもスマートに資料を表示できるfireは、その安値の割に優秀だった。あのとき買っておいた判断は賢明だったといえよう。
さて、京大化学対策はとりあえず物性化学の復習から入った。序盤は快調だったが、後半の配位結合などの話から全くわからなくなってしまった。それもそのはずで、2Sの時点から全くわかっていなかったのだった(*1)。仕方がないのでわからない部分は諦めた。無機化学は物性化学の教科書を読みながらなら8割くらい解けるようだったので、解ける部分をひたすら暗記していくことにした。
次は化学熱力学を勉強した。私は化学熱力学の内容を理解していると仮定すると、あとは公式を暗記すれば良いことになる。その仮定のもと、公式を暗記したらそれなりに問題を解けるようになった。仮定を検証するのは、嫌な予感がするのでやめておこうと思った。
分析化学は曲者だった。内容としては、滴定や電気化学の問題が出るようだ。どちらも勉強したことがない。なぜ勉強したこともないのに分析化学にしようかと思ったかというと、研究室見学の際に、研究室の院生の方から「分析化学は楽勝だった。分析化学が一番簡単」と聞いていたからだった。なので勉強したことがなくても大丈夫かなと思っていたのだが、よくよく過去問を見てみると無勉で解けるような問題ではなかった。当然といえば当然だ。私は8月上旬になって初めてこれはマズいと気が付いた。
分析化学の代わりになりうる選択肢としては、他に生化学と有機化学があった。有機化学は論外なので、生化学を検討してみた。近くの図書館まで自転車を漕いで生化学の本を探してみたが、一冊もない。より遠い図書館まで行く羽目になった。そこでは二冊くらい生化学の本があったので、それを読みながら過去問の解答を作ってみることにした。すると、語句埋めはなんとかできたものの、文章で解答する問題が一切解けないことがわかった。これなら分析化学の方がマシである。 電気化学は化学熱力学の応用という側面があり、滴定も化学平衡の法則に従って方程式を立てるだけの計算問題があったため、10%くらいは解ける問題があったのだった。結局分析化学を選択することにした。対策としては、テキストを読みながら過去問の解答を作成し、不足していた知識をひたすら暗記していった。これで、出題パターンにもよるが4割程度シラフで解けるだろうと思えるくらいにはなった。私にとっては正解も間違いも区別がつかないことを利用して、自己採点のときに勘による解答も正解扱いしてしまえば、得点率7割5分は固かった。
物理学と物理化学は専門科目も受けるためみっちり勉強する必要がある。基礎の物理は楽勝、専門の物理もおおよそ量子力学Iと統計力学Iで処理できる範囲でそう難しくなかった。私には正準変換、角運動量の演算子、量子理想気体、第二量子化など数々の弱点(*2)があるが、角運動量が稀にでるくらいで他は全て範囲外のようだった。これ幸いということで、物理は満点を目指して演習することにした。
物理化学は守勢の戦いを強いられた。基礎の物理化学は構造化学と物性化学と化学熱力学と反応速度論でカバーできたが、専門の物理化学で出題される分子分光学はお手上げ状態だった。勉強したことがないのに問題は専門レベルなので、これはもう対処できない。分子分光学以外の内容は化学熱力学から出題されることが多く、追加の知識はそれほど必要ないようだったので、化学熱力学を重点的に演習することにした。分子分光学は......記号の選択で答える問題が多かったので、物理の勉強で培われた物理的直観を最大限に活用し、直感を駆使して解答する戦略となった。 こうなると、物理学で満点近くとってどうにかカバーしなければならないだろう。
私はこのようにして過去問演習を進めていった。(続く)

(*1)それゆえ成績は可であった。
(*2)弱点が多すぎて弱線や弱面を形成している。こうした、弱点の集合として定められる空間に入っている位相を弱位相という。また、弱点が連なって弱線や弱面となっているとき、弱点は弱連続であるという。

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