・8月19日(2)
私に位相空間の知識がまるでないことが明らかになったためか、質問は別の話題に移った。
Q6「位相力学系の話でしたが、関連する分野に微分方程式が挙げられます。******はご存知ですか。」
またしても答えることができない。確かリプシッツ連続の定義を聞かれたような気がするが......。
Q7-1「それでは.......、微分方程式u'=2u+1を解くことはできますか。」
惨状を見かねてサービス問題を出してくれたらしい。これは解けそうだ。
A7-1「そうですね、(白板で計算を始める)u=e^2xとすると1が余るので......」
なんと、解の形を仮定して真の解に徐々に近づけようとしている。
Q7-2「u'=2uなら、解くことができますか。」
A7-2「あ、それならu=C e^2xですね。そうか、2u+1=vとおきかえると......(白板で計算する)、微分方程式が1/2v'=vになるので(板書: v=C exp(2u)=C exp(v-1) )、えーっと......。」
発言こそは間違っていないが、板書はめちゃくちゃだ。
Q7-3「変数分離形は分かりますか。それは変数分離形ですね。」
決定的なヒントだ。何が求められているのか、ようやく理解できた。
A7-3「ああ!最初の微分方程式で、2u+1を左辺の分母に持ってきて積分ですね。こうなる(板書: 1/2 log|2u+1|=x+C ∴ 2u+1=Ce^2x)ので、u=C e^2x-1/2です。すみません。」
やっと解けた。自然と謝罪してしまう。
Q8-1「レポートから離れて、基礎的な数学の知識を伺います。テイラー展開の式はかけますか。」
A8-1「はい。(書く)」
無様な受け答えが続いたためか、質問が非常に易しくなっている。流石にこれは書けたが、テイラーの定理の剰余項を書けだとか、C^∞でも剰余項が発散する例を出せとか言われるとまずい。
Q8-2「e^xをx=0のまわりでテイラー展開してください」
A8-2「それは、こうですね。(書く)」
そんなことは言われなかった。これに答え終わると、「いいでしょう。以上で試問は終わりです。」と言われた。どうやらいいらしい。あとは志望する指導教員を確認されて解散となった(*1)。
疲れた。私の受け答えはかなりひどかったが、試験官をされていた先生方の様子には、なんとかして私の中にプラスの点を与えられる要素を見出そうという優しさと努力が感じられた。これでいいのかは別として、きっと受かっているだろう。
それにしても、試問で会話能力を使い切ってしまった。もうしばらく会話できそうにない。帰宅して着慣れた服に着替え、しばし休憩しつつ思案した後、下北沢の食券制ラーメン店「こてつ」に向かった。ところが、下北沢は人で溢れかえっていて、まともに歩くこともできない事態であった。どうやらよさこいをやっているらしい。喧騒と混雑が疲労を増幅させる。どうにかこうにか食事を済ませ再び帰宅する頃にはもうへとへとになっていた。明日は京都に出発しなければならない。荷造りもほどほどに、22時半ごろ就床した。 (続く)
(*1)そういえば、例のレポート5章の「弱点」は全く触れられなかった。どうやら、最初の10分要約で扱った内容が口頭試問で何を聞かれるかに関わる全てらしい。質問することも即興で考えているのだろう。まあ、そんなに真剣にレポートを読んでいる時間はないか。
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「私の院試体験」目次
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