2018年3月11日日曜日

fire HD 8タブレットの話

1.概要
昨年末、amzonのタブレット端末であるfire HD 8を購入した(図1)。購入価格は約8000円だった。3ヶ月ほど使用したところ、不便な点はあるものの、読書とamazon ビデオの視聴には十分な役割を果たすことが分かった。
図1 fire HD 8

2.背景
2017年の5月、kindleで多数の漫画が90%以上のポイント還元の対象となる大規模なセールが実施された。このセールを受けて初めて電子書籍の漫画を購入したものの、やがてPCでは画面との距離が遠く読みにくいことが分かった。その結果、購入された本はあまり読まれることのないまま、しばらく死蔵されることとなった。
その後、同年9月から3Aセメスターが開始された。この学期では制御理論のセミナーを受講していた。これは制御理論のReview論文を読むというもので、私は当該論文を毎週少しずつ自分で印刷して授業に持参していた。しかし、紙が次第にかさばっていく、散逸する、セミナー部屋の机が狭く紙を広げにくい、といった問題を抱えていた。
そのセミナーを一緒に受けていた中に、iPadで論文を参照している学生がいた。その様子を見た私は、タブレット端末があればこれらの問題を解決できる上、死蔵されていた漫画を読むのにも便利だろうと考えた。そんな折、当時定価11980円だったFire HD 8が7980円で購入できるセールが実施されていることを知り、購入に踏み切った。fire HD 8はiPad mini程度のサイズで、サイズ・価格の点で適当だと判断した。

3.方法
主に以下に示す用途でfire HD 8タブレットを使うことで、価格に見合う効用が得られるかを調べた。
a)kindleで購入した電子書籍を読む。
b)ebookjapanで購入した電子書籍を読む。
c)他からダウンロードしたpdf書類を読む。
d)amazonビデオで映像を視聴する。
e)Webサイトをブラウジングする。
なお、私はamazon prime student会員である。

4.結果と感想
a)kindleで購入した電子書籍を読む。
この用途に関して、fire HD 8は十分な役割を果たした。特にページ送りや拡大縮小など基本的な機能はPC上よりも遥かに快適だった。かさばることなく多くの本を持ち歩けるのも便利である。電子書籍に限らないことだが、fireは動きが全体的に軽く、安くともそれなりのスペックがあると思われる。
しかし、kindleのアプリは管理機能が弱く、新しい順やタイトル順などにただ一覧表示することしかできず、本を整理整頓することができない。かさばることなく多くの本を所持できるメリットがある一方で、多くの本を所持すればするほど何の本があるのか把握しにくくなるのだ。いわば適当に大量の道具を詰め込まれた四次元ポケットみたいなものである。
その他、これはタブレットは関係ないが、漫画の中にはカバー裏が収録されていないものがあり、不満である。こういう訳で、セール本や入手困難な本はkindleで買っているが、電子書籍が紙の本の代替となるには至っていない。
これらの点が改善されることを望む。

b)ebookjapanで購入した電子書籍を読む。
kindle本のセールと同時期にebookjapanでも大規模セールを開催しており、私はそれらも購入していた。ebookjapanであるが、fireの公式アプリストアからアプリを入手することができず、サポート切れの古いバージョンのアプリか、ブラウザ経由で読むことになる。前者ならサポート終了後に発売された本を読むことができず、後者ならオフラインで読むことができない上に基本機能に不満があり、いずれにせよ不便である。このように、fireでkindle以外の電子書籍を読むのはお勧めできない。
なお、ebookjapanで買うとkindleと異なり背表紙を本棚に並べているように表示することができる。この点はkindleより優れている。

c)他からダウンロードしたpdf書類を読む。
図2 Review論文の閲覧
一部表示が崩れる書類もあるが、基本的に問題はない。特に、セミナーで使ったReview論文を読むのには快適だった(図2)。pdfの解説をダウンロードして、ノートを傍に広げて勉強する用途には、PCより場所を取らず読みやすいfireは優れている。

d)amazonビデオで映像を視聴する。
図3 キルミーベイベーの視聴
タブレットで見る方が体勢が自由になるので、fireは動画視聴にも適している。動画はダウンロードしてオフラインで視聴することもできる。fireにより外でも利用可能になるのは素晴らしい。
amazon primeの見放題サービスは、他の定額動画サービスと比べるとラインナップがやや貧弱ではあるが、会費の安さを考えれば十分である。特に、キルミーベイベーが視聴できるという点で本質的に優れている(図3)。
fireにはHuluやNetflixのアプリもあるが、利用したことはない。dアニメストアのアプリはない。ブラウザを使ってもdアニメストアのアニメは視聴できなかった。

e)Webサイトをブラウジングする。
PCを起動するのが億劫なときに役に立つ。スマートフォンよりも画面が大きいので文章や画像が読みやすくなる。amazonでの買い物には専用のアプリがあり、これもスマートフォンよりはやりやすい。しかし、これらはPCの方が快適である。漢字への変換の質が悪いのもマイナスだ。

f)その他
Twitter, Facebook, instagramのアプリもあるが、ほとんど使っていない。音楽も、PCで作成したプレイリストとの同期のやり方がわからず聞いていない。これらはスマートフォンの方が便利である。
100均で買った保護シートを貼っているが、かなり傷つきやすいためちゃんとしたものを貼ったほうがよかったかもしれない。

5.結論
公式ストアから利用できるアプリは種類が少ないため、読書とamazonビデオの視聴以外の機能には大して魅力が感じられない。しかし、割り切ってこれらの機能に絞ってシンプルなタブレットとして利用する分には有用である。廉価であるため、これらの用途だけでも価格以上の価値は感じられた。

2018年3月9日金曜日

振り返り: 3Aセメスターの授業

月3: 反応動力学
反応速度論である。分子の衝突の古典的なモデルや、量子化学を考慮したモデルで化学反応の速度を考察した。授業には毎回4人くらいしかいなかった。授業スピードが遅めで、試験も易しく、3Aの癒し枠の1つだった。

月4: 電磁気学
資料だけもらって授業は聞かなかった。単位が来てよかった。

月5: 数理生物学
統合自然科学科ならではの授業の一つである。数理生物学は、生物の個体数の変動を数式で記述する学問を指すことが多いが、この授業の数理生物学は生物を説明する理論モデルの体系だった。具体的には、チューリングパターン、Hodgkin–Huxley方程式(神経細胞を記述する微分方程式系)、生命の起源と進化などを扱った。授業は正直よくわからなかったが、網羅的に学ぶことが難しい分野なので、貰える資料を読んでいくのは面白かった。

火2: 量子力学III
今学期で最も難しかった。Rabi振動、時間に依存する摂動論、散乱問題、電磁場の量子化、第二量子化を扱っていた。量子力学III以前にそもそも僕は量子力学IIが分かっておらず、わからないのも当然であった。それくらい分かっていないのに優が来たのだから余計分からない授業だった。

火3-5, 水3-5: 数理科学演習I
van der Pol方程式、Hodgkin–Huxley方程式、ローレンツ方程式、有限サイズ二次元イジング模型などをシミュレーションして、力学系・カオスやモンテカルロ法の手法を身につける授業だった。私はシミュレーションにはC言語を用いた。課題が一通り終わった後は、自由研究として、非弾性衝突を表す微分方程式のシミュレーションを行った。
延々プログラミングをするのはかなり精神的に疲れるもので、特に私はプログラミングに疎く、課題の進度が遅い方で、割と遅くまで残っていたのでしんどかった。今学期で最も心がつらい授業だった。

水1: 数理科学セミナーII
制御理論を解説したReview論文を輪読するセミナーだった。英文で読みづらく、誤植が多く、ラプラス変換のバックグラウンドもなかったので大変だった。最初は本当に訳が分からず、適当にごまかしながら危うい説明をしていたが、セメスター序~中盤ごろに日本語の制御理論の入門書を一冊読み終えてようやく何を言っているのかが分かるようになった。それでも大変なのは相変わらずで、分量内容ともに苦しめられた。私は白板だけでなくスライドも使って発表していたので予習に余計時間がかった。先生も制御理論の専門家ではないため、先生も学生四人も誰も言っていることが理解できず全員首を傾げたまま流したこともあった。

水2: バイオイメージング
細胞の中で起こる現象をいかにして可視化するか、そして可視化した画像からいかにして定量的な情報を引き出すか、という内容だった。可視化のための標識の設計に物理学の知識が、情報の引き出しに数学の知識が活かされていることが分かったのは興味深かった。今学期で一番緩い授業だったので、資料にさっと目を通して後は主にセミナーの予習に充てていた。

木1: 構造幾何学
位相力学系の授業である。位相空間の上で繰り返し写像をはたらかせたらどうなるかということを習った。より分析しやすい同型な位相力学系を構成して考える手法や、位相力学系のゼータ関数やエントロピーなどについて学んだ。試験は前バラシがあった上に7題中2題選択と、非常に易しかった。
この授業は先生が最も印象的だった。かなり変な人で、一部からカルト的な人気があった。「あンの、そンの」を連発し、服装は体操前のような短パンあるいはタートルネックで、リュックはよれよれで、漢字の間違いが多かった。こぼれ話もシュールで、突然北欧のスパイを語り始めたり、「羽衣チョークはチョーク界のロールスロイス」「ζ関数を神と崇め奉っている危ない人達がいて、その人たちの前で引数をs以外の文字で書くと逆鱗に触れる」などと言ったりとなんだかよく分からないものばかりだった。前バラシについても、「試験前には予想問題を作って配ろうかと思っています」と言っており、自分で自分の問題を予想するのか(しかも完全に的中させた)と困惑したものだった。とにかく思い出の多い授業であった。

木2: 構造幾何学演習
構造幾何学に関する問題を解いた。初めは何十人もいて人が多かったが、授業が進むにつれどんどん人が減っていった。それもそのはずで、配られる問題が授業よりも遥か先の内容をやっていて、問題の意味が理解しがたかったのだった。最終的に授業で全く扱っていないエルゴード定理の証明問題になっていた。最後の方は4人くらいしか解いていなかった。すごい人たちはすごい問題を解いていたが、易しい問題も残してくれていたので、僕は地道に出席して易しい問題を毎回解いていた。

木4: 実解析学II
フーリエ解析の授業である。トーラス上の関数から始めて、ℝ上の関数、そして超関数のフーリエ変換を扱った。内容は難しかったが、説明は明快で、分からないなりに得るものの多い授業だった。超関数のアイデアの面白さや、ルベーグ積分の有用性が感じられた。特に、関数の遠方での減衰の速さとフーリエ変換の先の滑らかさが関係しているという話が面白かった。
この先生も(構造幾何学の先生には負けるが)独特な人で、寡黙な雰囲気から「関数が(両手を狭めるジェスチャーをしつつ)こうジューッと縮んでいく」「(色々定理はあるのだが、それらを紹介していくと)魔界の様相を呈してくるのでこれくらいで」などと印象的な言葉が多かった。
試験で評価のはずが、人が少ないからという理由でレポート評価になった。レポートは4題しかなく概ね易しかった。

木5: 実解析学演習II
実解析学IIの授業に関連する問題を解いた。難しかった。間違えたところを静かに指摘されるのがちょっと怖かった。

金2: 数理代数学
群と群の表現についての授業だった。群の指標がまあまあ分かった。説明はわかりやすかったが、表現について書かれた本は少なく、進度の速さに苦労した。特にリー環の表現は消化不良である。期末レポートは難しかった。
土曜日にメールで質問を送ったらものの数分で返事が返ってきて驚いた。

金3: 数理代数学演習
数理代数学に関連する問題を解いた。1問3点+ボーナス20点のシステムで、他の演習よりも多くの問題を解かねばならず、統合自然の数学にしてはしっかり問題を解かせる授業だった。おかげで授業の理解が深まった。これをやっていなければ数理代数学のレポートはほとんど投げ出していただろう。
TAの人からたまにニンニクの臭いがした。その日は多分千里眼(※ラーメン店の名前)に行っていたのだろう。

金4: 有機化学I
有機分子の構造から、基本的な反応、分子間相互作用までを習った。先生はベシクルなどの構成を専門としている方で、例えば異性体がテーマの回なら生物の鏡像異性体の選択性の話をするなど、今習っている内容が生命の研究とどう関係するのかについて語ってくださり、これが毎回楽しかった。
ただこのような試験範囲外のことまでノンストップの早口でたくさん喋るため授業のスライドの枚数が非常に多く、105分の授業に109枚のスライドがあった回もあった。先生が終盤風邪を引いてからは50~60枚くらいにまで減ったものの、やはり普通に聞いていたらとても頭に入らないので、興味のあるトピックス以外は話を聞かずに自習していた。

金5: 量子力学演習II
水素原子、角運動量、摂動論についての問題を解いた。水素原子の問題では、物理数学IIで習ったもののさっぱり分かっていなかった合流型超幾何関数の意味がやっと分かってスッキリした。角運動量はいまだに分からない。

K鳴狗盗

「無KのK」が推敲を重ねた硬めの文章を書く路線で確立してしまい、更新が止まってしまった。
こちらのブログでは、さほど読んで欲しいと思わない記事も気楽に書くことにする。「鶏鳴狗盗」から名前を取ったのもそのためである。つまらないものでもそのうち役に立つだろう、ということだ。