2018年10月14日日曜日

私の院試体験(7)

・8月17日(2)
私はこのとき、明後日使う自分の受験票がどこにあるのかわかっていなかった。受験票は出願の際に書類に記入した住所に郵送される。私は、帰省することを見越して北大のときも京大のときも実家の住所を書いたはずだった。ところが、実家滞在中に届いたのは京大の受験票だけだった。おかしい。間違えて東京の方の住所を書いてしまったか。受験票もなければ、届くはずの資料がないため試験会場も試験の時間もわからない。受験失敗の危機だった。
早く東京に戻って確かめたいところだったが、勉強の進捗を優先して実家に残ることにした。8月17日は平日だから、もし東京に戻って受験票が届いていなくても北大に電話すればなんとかなるだろう。そう自分に言い聞かせながらも、新幹線の中で東京到着を待つ私の胸中は不安3割、眠気7割であった。私はいつの間にか寝てしまった。そうして、新幹線は東京に到着した。
ポストを開けると、果たして北大からの封筒が入っていた。中身は受験票だ。良かった。他にも紙が入っていた。読むと、試験会場や試験開始時間の詳細が書いてあった。15時集合とのことなので、寝坊のリスクは低そうだ。更に、「口頭試問開始後は、まずホワイトボードを使ってレポートの要約を説明してください。発表時間は10分です」との説明があった。今まで何も知らなかったので何も準備していない。明日はTOEFLの練習をするつもりだったが、予定を変更して要約の発表のため作戦を練ることにした。
ともかく、これで受験票が手に入った。安心した私は、スーパーに行って、ゴーヤーを買い、ご飯を食べた(https://twitter.com/tactfully28/status/1030396329887813632)。

・8月18日
北大院試の前日だ。私は鼻づまりに悩まされていたため、この日の午前は耳鼻科に行った。その耳鼻科に行くのは初めてだった。土曜日ということもあってか、中はかなり混雑していた。北大に出したレポートを読み返したり、スロウスタートを読んだりしてしばらく待った。スロウスタートの主人公は浪人している。院試の前にスロウスタートを読むことには、気持ちを落ち着ける意味で大きな意味がある。診察室に入ると、端正な顔立ちをした若い男性の先生がいた。今までテレビなど以外では見たことがないほど格好良い人だった。もしかしてそのせいで待ち時間が長かったのか。
帰宅してからは10分要約の構想をまとめた。10分間で話せそうなことを整理して、「まずロジスティック写像がパラメータに依存してカオスに振る舞う旨を述べ、次に定義5と命題2を述べて、最後に命題2の証明の概要として定理1、命題1、定理2を紹介する」(*1)という流れに決めた。10分間で板書するため、板書は全て英語で書くことにした。要約の発表中はできるだけ何も見ずに発表することが好ましいとのことだったため、板書する文章をノートにまとめて、これを暗記した。
一通りの準備が終わった。もう日も沈んでしまった。私は、密かに購入していたゲーム機、Nintendo Switchの箱を取り出した。私がSwitchを購入したのは7月の頃だ。丁度そのとき通販でセールになっていたのだ。しかし、7月は前述の通り慌ただしく、Switchの箱は開封されることなく放置されていた。ところが、Switchの購入目的の一つは院試勉強のご褒美だ。京都大学を受けた後はしばらく実家に居続けるつもりであり、私は実家でゲームを遊びたかった。流石に箱のままでは持って帰れないだろう。私はこのタイミングでSwitchを開封する必要があった。
箱を開け、本体を袋から取り出した。Switchは据え置き型のゲーム機とされているが、携帯機としても使用できるよう本体には画面が備わっている。同時に購入しておいた保護シートを開封し、付属の画面拭きで埃を丁寧に取り除いた上で、画面に慎重に保護シートを貼り付けた。気泡はほとんどない。私にしては上出来だ。
Switch本体にコントローラーを装着した。前述の通り、Switchは携帯機としても使用できるゲーム機だ。つまり、テレビや電源と線で結んでいなくても遊ぶことができる。私の手には、起動さえすればいつでも遊べてしまう新型ゲーム機が握られていた。私はSwitchを起動した。(続く)

(*1)付番に関しては、「ロジスティック写像(1)」「(2)」を参照されたい。

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