2020年11月10日火曜日

pairsの自己紹介文の意図

前回の記事でpairsの話が出た。散々ネタとして擦り続けてきたマッチングアプリの一件だが、そろそろ自己紹介文がどうしてあんな感じになったのかという裏話をしておこうと思う。

1. 友達やblogのファンを増やしたかった
いきなり恋人を目指すのは私としても心理的ハードルが高い。そこで、とりあえず異性の友達を増やすことができればいいや、と目標を下げてやってみることにした。何事も気楽に構えていくのが大事である。私はeasygoing styleの重要性を料理人・Jamie Oliverから学んだ。
私に親しい人はわりかし私のblogを読んでくれている。むしろblogきっかけで親睦を深めたという人も多い。そこで、まずblogを読んでみたいと思わせるのを狙ったわけだ。そうなると、いつものノリで初めての人向けの記事を書くとどうなるか、を考えればいいということになる。

2. 男性のメインストリームの競争で勝ち抜くのは厳しい
基本的に男性にはいいねが来ない。そもそも男性のほとんどには外面的魅力がない。女性アイドルと比べて男性アイドルの人数が少ないことからもわかるだろう。あるいはニコ生主とか、VTuberとか、そういうのを見てもいい。男性は注目を集めにくい。その意味で男性性は無価値である。
男性の場合放っておいてもいいねが来るということはまずないため、どうにかして差別化戦略を練らなければならない。いいねを得やすい男性というのは、いわゆる3高 ーー高身長、高収入、高学歴ーー を兼ね備えたような人だ。私には東大卒という肩書きだけはあるが、3高をありがたがるような女性が私の頭脳をありがたがるかというとそれはちょっと違うだろう。「東大卒」が100点なら「理系」で-30点、「博士課程進学を検討中」で-120点である。博士課程進学を検討するような人間は、自らをむしろ"低学歴"とみなすべきだろう。
こうなってくると、もう奇策に走るしかないわけだ。いや、奇策に走るというと聞こえが悪い。私がやったのはブルーオーシャン戦略だ。誰が何と言おうと、ブルーオーシャン戦略である。

3. ロクな趣味がない
共通の趣味をきっかけに知り合うというのはよくある話だ。だが、私の代表的な趣味はといえば、自己紹介文中に書いた通り、「キムワイプ卓球、ブログ執筆、クロスワード作り、工場見学、ゴーヤーチャンプルー作り」である。あとはスマブラ(*1)をしたり、まんがタイムきらら原作の深夜アニメを見たりしている。一応も趣味かもしれない。だが、これで誰と知り合えるというのか。キムワイプ卓球をやっている人なんて、既に大体知り合いである。
無趣味というほど無趣味でもないが、趣味は出会いに使えない。これでは私がどんな人なのか知ってもらうきっかけがない。知ってもらうためには、「ブログ執筆」の趣味を活かして最大限読ませる文章を書くしかなかったのだ。

4. 逆にこれで誰が食いつくのか興味があった
明らかに場違いだという自覚は一応あったが、逆にこれで誰からいいねがくるのか実験したい気持ちがあった。これでいいねしてくれる人がいたら、それはきっと良質な人であろう。
結果として個性的な方々とやりとりできて、とてもよかった。

とりあえず、pairsでの目標の半分は達成されたとみてよいだろう。残りの半分については......今後の研究課題としておこう。

(*1)ちなみに、好きなキャラはパックマン、ゲッチ、バンカズである。VIP未達。

2020年11月9日月曜日

Twitter広告

そういえばTwitter広告の話をまだしていなかった。

私のblogのアクセス数は、大体1記事100程度である(*1)。私1人で10回くらいアクセスしているから、実際はもっと少ないと見ていいだろう。たまにblog経由で私のフォロワーになってくれる人がいるが、基本的に身内しか読んでいない。
別に人生をウケに捧げて大バズを狙うつもりはない(*2)のだが、身内だけに限ってみても「無KのK」の固定ファンは3人だか20人だかいるわけで、読みさえすれば私の記事を気に入ってくれる人はもっといるのではないかと思う。ただ、どうやって身内の壁を越えて潜在的なファンまでリーチするのかが問題である。

そこで、約5,000円を投じてTwitter広告を打つことにした。このblogには今のところ全く広告を貼っていないから、blogによる収入は0円である。今後収入が生じる見込みもない。それなのに宣伝費をかけるのは、単なる私の酔狂だ。

実際のツイートがこちらである。

何か写真があった方が人目を引くだろうということで適当に写真を選んだ結果、箱で運ばれる鶏3羽の写真になった。これは確か、京大のクジャク同好会の新歓で鳥の丸焼きを食べたときの食材の写真だ。
私は以前アメリカに行った(*3)際に砂漠地帯を訪れているので、今にして思えばそのときの写真を使えばよかったのだが、どういうわけだか鶏3羽の写真である。まあ砂漠でも鶏でも大して変わりはないだろう。どちらも物質であるという点では同じである。

結果はイマイチだった。費用¥4,521に対して、リンクのクリック数は433だった。
プロモツイートには現在17件のいいねがついているが、うち8件は私のフォロワーによるものだ。私のフォロワーが増えたわけでもなく、どこかで言及されたわけでもない。あったことといえば、私の後輩に「何やってるんだコイツ」と思われながらプロモツイートのスクショを撮られたことくらいだ。

ちなみにpairs(マッチングアプリ)の男性3ヶ月プランは約7,000円だった。本来の目的で有効活用できたのかはこの際問題にしないことにして、ブログの読者を増やすという意味ではこちらの方が余程効果的だった(*4)と言えるだろう。

(*1)たまに1000くらいいくこともある。「続・私の院試体験(1)」は今見たら913アクセスになっていた。
(*2)そこまで人を面白がらせる才能もない。
(*3)ref. K鳴狗盗: 思い出の石
(*4)読み手の反応をダイレクトに聞けるというのも良かった。

2020年11月6日金曜日

催眠音声を聞いてみよう!(R-18 ver.)

noteに「催眠音声を聞いてみよう!(全年齢向け)」という記事を書きました。この記事では、催眠音声初心者の方に向けてnoteに書けなかった成人向け音声の紹介をします。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。

2020年11月4日水曜日

ビッグミントタブレット

私はタブレット菓子をよく食べている。タブレット菓子というのは、ミント風味の香料を人工甘味料と一緒に固めた錠剤型のお菓子のことである。フリスクとか、ミンティアとか、そういうやつだ。食べると脳が刺激されて集中力が上がる気がする。昔はガムをよく噛んでいたのだが、噛みすぎて顎が痛くなったのでやめた。

特によく食べているのが、トップバリュのミントタブレットという商品だ。箱ではなく袋に入っていて、ミンティアやフリスクよりも容器包装のプラスチック量が少なくちょっとエコな感じがする。
いつものようにスーパーに行ってみると、ミントタブレットの隣にビッグミントタブレットという商品が並んでいるのを発見した。通常版のミントタブレットよりも一粒一粒が大きいらしい。重量当たりの価格で比較するとこちらの方が少し安いようだ。私は喜び勇んで、ストロングとクールの2種類を購入した。

ミントタブレットとビッグミントタブレット(表)

早速開封して食べてみた。

......ん?こんな味だったっけな。

比較のため通常のミントタブレットを食べてみるが、やはり味が違う。ビッグの方は少し苦いように感じられる。食感もボソボソしているし、噛んだどきに鼻に抜ける清涼感もやや弱い。何か妙だ。裏面を確認してみた。

ミントタブレットとビッグミントタブレット(裏)

何と成分が違うではないか。ステアリン酸カルシウムが乳化剤に相当するのかどうかはよく分からないため置いておくとして、ビッグのストロングの方はカフェインが入っていない。クールはもっと違いが顕著で、甘味料の組成が全く違う。道理で味が違うわけだ。
更に見てみると、作っているところも違うようだ。通常のタブレットは日本のカバヤ食品が作っているが、ビッグミントタブレットは韓国のメーカーが作っている。韓国のメーカーの名前は出ていない。値段と大きさと味と食感と原料と製造メーカーが違うとなると、それはもう全く別の商品というべきではないか。大方、イオンの担当者が韓国メーカーのお菓子に目をつけ、ガワだけ変えて自社ブランドで売り出そうと考えたのだろう。「韓国だからよくない」「韓国製品は全部ダメだ」といった、相手してはいけない系の人みたいな主張をするつもりは毛頭ないのだが、騙された感じがするのは否めない。
安いからと言って書い続けるのも癪である。フリスクかミンティアに乗り換えようか迷っている。

2020年11月3日火曜日

君は植田一石先生の授業を受けたことがあるか?

学部3年の頃、数学科の植田一石先生による「構造幾何学」という授業を受けていた。内容は位相力学系の話だったのだが、この授業で印象的だったのはむしろ雑談の方だ。植田先生は、今まで私が授業を受けてきた中でも最も脱線の激しい先生だった。
ある日は、力学系における測度論的エントロピー(Kolmogorov-Sinaiエントロピー)の話だったのだが、エントロピーから情報エントロピー(Shannonエントロピー)の話になり、情報といえばということでなぜか北欧のスパイの話になった。また別の日は力学系のζ関数と構造行列の関連についての話だったのだが、ζ関数といえばということで「ζ関数を神と崇め奉っている危ない人達がいて、その人たちの前で引数をs以外の文字で書くと逆鱗に触れる」というなんだかよくわからない話に脱線した。
試験も印象深いものだった。植田先生は前々から「授業最終日に試験の予想問題を配る」とおっしゃっており、我々学生は「自分で自分を予想するのか......」と困惑していたのだが、いざ試験当日になってみると予想問題がそっくりそのまま配られたのである。予想的中率100%であった。

とにかく始終がそんな調子で、まるで講義を聞くというより夢を見ているかのような、非常に独特な授業だった。そんな植田先生の授業は東大に通わないと味わえないものだと思っていたのだが、先日こんな動画を発見した。読者の皆様にも紹介しよう。

2017年度 沼田市中学生のための玉原数学教室

これは植田先生が中学生向けに講演されたときの動画である。相手が中学生といえど全く遠慮せずいつもの冗談(冗談かどうかも定かでないが)を飛ばしていく、アクセル全開の授業だった。百聞は一見に如かずというように、是非冒頭だけでも見てほしいのだが、のっけから

・厨二病感を出そうと思って「無限の話」というタイトルにした
・「無限の話」というと「数学における無限について話をする」のか「いつまでも話をする」のかわからない
・これはわざと曖昧にしている
・日本語の曖昧という言葉自体が曖昧で、「曖昧」には「ambiguous」「vague」の二つの意味がある
・「いつまでも話をする」といったが、死んだら話ができないので現実にはできない
・そうでなくてもご飯を食べなくてはいけない
・「無限」を表す記号には「∞」だけでなく「א」がある(黒板に書くが、書けていない)
・「א」が書けない数学者はよくあることだろうが、更に重症になるとひらがなが書けなくなる
・私はそこまで重症ではない
・数学は抽象的な学問
・「抽象」の対になる言葉として、ここでは「具体」ではなく「捨象」を取り上げる
・インドとかにいるあの大きなゾウを捨てているということで、いかにもいっぱい捨てていそうな感じがする

という具合に話が進んでいくのだ。これでも一応冒頭を要約したつもりである。一体いつから本題が始まるのか、それとももう本題なのか、この講演は一体どこに向かっているのか、さっぱりわからないまま聞き進めないといけない。これを最後まで聞いていた中学生は、一線で活躍する本物の数学者の話を聞いて、果たして何を感じ取ったのだろうか。


植田先生の話が聞ける動画は他にもある。次に紹介するのは植田先生が着任されたときのインタビュー動画で、これまでの経歴や研究姿勢について紹介するという趣旨のものである。これが真面目なインタビュー動画と思えないほど面白く、一部の学生の間では語り種となっている。

2015年度 ビデオゲストブック

私が思う見所を2つ紹介しよう。
  • 4分30秒くらいから、「文系の女子大生を2人向かい合わせて立たせて、1人に「かわいい」と言わせると、お互いに「かわいい」「かわいい」と言い合って「かわいい」が共振増幅されてレーザーが出る」「東大数理の学生を2人向かい合わせて立たせて、1人に「賢い」と言わせると、お互いに「賢い」「いやお前の方が賢い」と言い合って「賢い」が共振増幅されてレーザーが出る」というくだりがある。
  • 13分くらいから、「内容が分からなくても90分間セミナーに出続けろ、そうすればボディーブローのように効いてくるから、という教えがある」「ボディーブローのように効くということはそのセミナーに出続けると倒れるのか」「鍛えていない普通の人はボディーブローを受けたら一発で倒れる」というくだりがある。
何がどういう流れでこんな話になったのか。それは君自身の目で確かめてくれ。

2020年10月25日日曜日

芝公園の妖怪

知り合いに国語の教員をしている女性がいる。昨日、彼女から、マッチングアプリで知り合った男性と会ってみたらひどい目に遭ったという話を聞かされた。仮に、女性側をA、男性側をBと呼ぼう。


AとBは夜の芝公園で会った。当然2人は初対面である。Bは慶應の文学部出身で、大学では歴史を勉強していたという。Bは背が高く、顔立ちも整っていて、自信家のようであった。だが、よくよく話を聞いてみると、Bの発言は言っていることの意味がよくわからないのである。

例えばこうだ。
B「君は感覚派なんだね。感覚派なのに、君はこんなにも美しい」
A「どういうこと?」
B「理論ではなく、感覚で物事を捉えている。美しい薔薇にトゲがあるように、君の容姿に惹かれた人は感覚派というトゲに刺さってしまう」

どういうことなのか全くわからない。何が「なのに」なのだろうか。一体どの点で逆接になっているというのか。感覚を重視することと、容姿に何の関係があるのか。感覚派なのはトゲというべきことなのだろうか。
そもそもAは別に感覚派ではない。

あるいはこうだ。
B「(東京タワーのライトアップを指して)高校生の頃、初恋の人に僕はここで告白したんだ」
A「ロマンチックだね。成功したの?」
B「成功すると思うよ」

意味がわからない。成功すると思うとはどういうことなのか。Bがここで告白したという出来事は本当にあったことなのか。果たして過去は実在するのか。それとも、過去なんて全部消えてしまっていて、'今'以外この世界のどこにも残っていないのだろうか。

しまいにはこんな感じになったらしい(*1)。
B「君はたぬき顔だね」
A「うん」
B「タレ目だし、お腹もポンポコで(*2)」
A(失礼だな......)
B「僕は犬顔なんだよ。街を歩いていても小型犬は吠えてくるんだけど、大型犬はお辞儀してくるの。犬には僕が賢いってことわかるんだろうね。犬顔だから」
A「私がタヌキに親近感湧くのと逆の話かな」
B「子犬だと思って拾ってきたらタヌキだったって話もよくあるしね」
A「……タヌキってイヌ科だもんね」
B「うん」

「うん」ではない(*3)。

Aは、東京タワーのライトが消えたことに気がついた。東京タワーの消灯時刻は午前0時だ。終電まであと4分である。このままここにいるとヤバい。Aは、トイレに行くと言って(*4)、Bを残して一目散に逃げ去った。Aは身の危険を感じていた。貞操の危機であれば、マッチングアプリを始めた時点で事前に想定することはできていた。しかしそこにあったのは、もっと別の何か ーー脳への危険ーー だったのだ。


一連の話を終えたAに対し、私は重たい沈黙を放っていた。Aは、私に大丈夫かと尋ねた。私は、Bに関する話を聞き、それに相槌を打っているうちにみるみる生気を吸い取られて、それが見て取れるほどに衰弱していた。
Aは「他の人にもこの話したけど、(貞操の危険ならともかく)私が感じた危険はなかなか分かってもらえなかったから、分かってもらえて嬉しい」と言った。聞けば、この話でダメージを負ったのは私が初めてということだった。
私は答えた。「論理がおかしくて......ヤバかった。脈絡がなく話が飛ぶとかじゃなくて、もっと理解ができないやつやった。俺は文章を書くのが好きやけど、やからこそダメージを負ったというか......この話を聞き続けると、俺は俺の文章を書けなくなる気がする。他の人は、話を聞きながらそこまで論理の流れに注目していないのかもしれない。君は国語の先生やから、意識的にせよ無意識的にせよ、接続詞に注目して聞いているやろうし」
ここまで言って、私にある考えが浮かんだ。「これって、妖怪とか、物の怪の類やったんじゃないやろか。ほら、目を合わせてはいけない妖怪みたいな話あるやん。それの論理バージョン」
Aは言った。「じゃあ、あのまま話を聞き続けたら......」
私は答えた。「"あっち側の世界"に取り込まれて、帰ってこられなくなる」
Aは言った。「東京タワーが12時に消えるってこと知っててよかった。知識は身を助くね」


その夜、いつものようにTwitterをしていて、1つのツイートが目に留まった。

 これは私のサークル友達のツイートである。これを見て、私には思い出すツイートがあった。

私ははっと気が付いた。世間に潜む妖怪はこいつだけじゃない。他にもいるのだ。特にキャバクラなんて、妖怪たちの伏魔殿とでもいうべき場所ではないか。
キャバ嬢が客の話を聞かないのは自衛のためだ。仮に客の話を聞いているキャバ嬢がいたとしたら、彼女たちは既に異界へと連れ去られてしまっているのだろう。だから、客の話を聞かないキャバ嬢だけが、"人間"としてキャバクラに留まることをできているのだ。

異界は存在する。仮に身の回りで妖怪に遭遇したとして、決して興味本位でまじまじと見つめてはならない。あなたが深淵を覗くとき、深淵もあなたを覗き返しているのだから。


(*1)他にもたくさんエピソードを聞いた気がするが、あまり思い出したくない。
(*2)Aは別に太っていない。
(*3)この話を聞いた私は、「へー。たぬきってイヌ科なんや!」と相槌を打った。それ以外に発言しようがなかったからである。
(*4)以前にBも別の女性に対して似たようなことをしていたらしい。私は、一目散に逃げたという部分を最初に聞いた。そのときは、「引剥をする羅生門の下人かよ」と茶化せるだけの余裕がまだあった。