2018年12月3日月曜日

三河島水再生センター見学レポ

この記事で述べたように、先月三河島水再生センターを見学させて頂いた。この記事では、その見学で教わったことをまとめる。

[浄化の仕組み]
下水は次の過程を踏んで浄化される。
1. 沈砂池: 枯葉や砂利などを取り除く。
2. 第一沈殿池: 下水をゆっくり流し、泥などを沈ませる。
3. 反応槽: 微生物を加え、汚れを分解する。水再生センターの心臓部。
4. 第二沈殿池: 微生物の作用で塊になった汚泥を沈殿させる。
5. 塩素接触槽: 塩素で消毒する。
全工程を終えて外に放流するまで、14時間ほどかけて処理している。

[汚泥]
第二沈殿池で沈めた汚泥は、一部を反応槽に戻し、残りは葛西の汚泥処理施設に送られる。汚泥は水と違って流れにくいため、ポンプでパイプに圧力をかけて運んでいる。汚泥の一部を反応槽に戻すのは、反応槽に微生物を補給するためである。つまり、反応槽の微生物量は沈殿した汚泥を通じて調節されている。微生物は下水の栄養を使って勝手に増えていき、汚泥と一緒に沈む。微生物の濃度や比率は一定に保つ必要があるため、適切な量を戻してやっている訳である。反応槽には1立方cmあたり1万の微生物が棲んでいる。
反応槽の各種成分は計測器で常にモニターされているが、ベテランの職員になると目で見ただけで調子がわかるという。

[資源利用]
水再生センターでは、発生する熱を冷暖房に利用している。
また、再生水は、他の公共施設や都営のマンションなどでもトイレの洗浄水として用いられている。水道管とは別にもう一本パイプを通す必要があるためハードルはやや高いが、再生水を導入したホテルもある。

[下水道管]
下水道は主に道の下を通っている。最初は細かった管が合流していき、次第に太い管へと集まっていく。下水道管にたまるゴミは、下水道の中に人が入って掃除している(その間も下水は流れ続けている)。下水が自然に流れるよう、下水道には傾斜がついている。しかし、勾配をつけるだけでは下水道管が深くなりすぎるため、所々にポンプ所を設けて下水を汲み上げている。

[豪雨対策]
豪雨の際に水再生センターがパンクしないよう、下水を一時的にためておくことができる雨水貯留槽が作られている。水再生センターの処理槽は常時全てが使われているわけではなく、点検や豪雨対策のため一部しか水が入っていない。また、工事や掃除で下水道管の中に入る作業員が汚水の洪水に巻き込まれないよう、アメッシュの情報を活用している。アメッシュの情報は、他にも豪雨が予測される地域の下水道のポンプ稼働台数を増やすなどの形で利用されている。
下水道管には合流式と分流式がある。合流式は下水と雨水を分けないもの、分流式は下水と雨水を分けるものである。分流式は豪雨に強いという利点があるが、導入コストが高い。東京の場合、東京オリンピックのときに下水道が急ピッチで整備されたという背景があり、分流式の下水道管が使われているのは有明の埋立地などの下水道の整備が遅かったごく一部の地域に限られている。下水道は常に使われているため、パイプを取り替えるのは困難である。

Q&A
・下水管の老朽化対策はどうしているのか。
前述のように、下水管を取り替えるのは難しい。下水管の内側に皮膜を作るという、下水を流しながら工事することができる補強方法があり、それを使っている。

・三河島水再生センターではどのような高度処理を行なっているのか。
反応槽で、リンを取り除くAO法を用いている。まず空気を送り込まない槽で嫌気性細菌を活動させ、その次に空気を送り込む槽で好気性細菌を活動させる。嫌気性細菌はリンを放出するが、こうすることで好気性槽の細菌がそれ以上にリンを取り込むようになる(*1)。
有明水再生センターではより進化したA2O法を使っている。

・反応槽では合成洗剤も分解できるのか。分解しにくい成分はどうしているのか。
合成洗剤は以前は分解しにくい成分からできていたが、今では改善されている。それでも分解しにくい成分は含まれているが、それらは反応槽で汚泥の塊の中に取り込まれ、沈殿する。
各種の工場からは分解しにくい有害物質などが出るが、それらは事業者側が処理することになっており、水再生センターではそれらを処理することは基本的に想定していない。家庭から出る下水の成分で、分解しにくいものとして代表的なのは油である。これも沈殿が基本戦略となる。油は下水道管で固まって詰まるという問題も引き起こすため、下水への油の流入は極力減らしたい。そこで、東京都では飲食店にオイルトラップの設置を求めている(*2)。水再生センターとしても、油を使わないレシピを募集して冊子にまとめるなど、家庭からの下水道への油の流入量を減らすための広報活動に取り組んでいる。

・ここではどれくらいの量の水を処理しているのか。
1日あたり40万t、25メートルプール1100杯分(*3)。

三河島水再生センターの人はたくさん質問しても嫌な顔をせず丁寧に答えて下さり(*4)、とても勉強になった。本当にありがたい。この記事を読んで下水道に興味を持った方がいれば、是非実際に訪れて見ることをおすすめする。

(*1)もっと詳しく教わったのだが、私の理解力不足のためこれがどういう理屈なのかいまいちわからなかった。
(*2)義務といっていたかもしれない。
(*3)つまり、ピーナツの殻でいうと厚さ55メートルである。
(*4)東京都下水道局の広報課に電話したときとは大違いだ。広報課からたらい回しにされて繋がった担当者は明らかにやる気がなさそうで、私が質問するたびにイライラしていた。

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