三店方式、という言葉を聞いたことがあるだろうか。三店方式とは、パチンコにおいて、パチンコ店が客に直接金銭を払わないことにより賭博罪を回避する手法である。具体的には、次の手順から成る(図1)。
1. パチンコ店に来店した客は、お金を払ってパチンコ玉を受け取る。
2. 客はその玉を使ってパチンコをし、玉を増やしたり減らしたりする。
3. 退店時に、パチンコの結果得られた玉の数に応じて、ボールペンなどの景品を受け取る。
4. たまたま店の近くにいた古物商のところに受け取った景品を持って行くと、どういうわけだか、その景品を高く買い取ってくれる。パチンコの結果が良ければ、客は儲かる。
5. 古物商は買い取った景品を景品問屋に売る。
6. 景品問屋は買い取った景品をパチンコ店に卸す。
図1 三店方式
私はパチンコ店に行ったことはないが、これを知ったときはなるほどうまくできていると思った。三店が無関係を装っているところがミソである。ところで、これが許されるのであれば、このよくできた仕組みを悪用して他の犯罪も脱法化できないものだろうか。
……そんなことを考えながら「有害指定同級生」を読んでいた。「有害指定同級生」とは、いつも卑猥なことばかり考えている都城さんの奇行に、真面目なクラスメイトの八橋さんがツッコミを入れていくというギャグマンガである。下ネタにも関わらずどこか知性を感じさせる都城さんの巧妙な屁理屈や、下ネタを通して社会の常識にどこまでも歯向かおうとする都城さんの反骨精神が見どころのマンガだ。
さて、この作品には、都城さんが売春を始めようとする場面がある(1巻 p19)。そこで考えたのが、三店方式を売春に応用できないかということだ。この場合、ボールペンの代わりにコンドームを使うことにより、物品や金銭の流れをより効果的に不透明化できるだろう。つまり、次のような作戦である。
1. 買春する側は、指定の店で、指定のコンドームを購入し、売春する側をラブホテルなどに呼ぶ。
2. 指定のコンドームではなく、ラブホテルに備え付きのコンドームを用いて性行為を行う。
3. 指定のコンドームが余るため、売春する側はそれを持ち帰る。
4. 売春する側は、指定のコンドームを古物商のところに持っていく。古物商は、それをたまたま高く買い取ってくれる。
5. 古物商は指定のコンドームを問屋に売る。
6. 問屋は指定のコンドームを1.の指定の店に売る。
とはいえ、売春はどうやら既にほとんど脱法化されているも同然らしいこと、また、売春防止法は売春を「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」と規定しており、対償の対象を金銭的対償に限っている訳ではないことを踏まえれば、この考えの意味は薄そうである。
再び「有害指定同級生」を当たった。この作品には、都城さんが「あたしがAVに出たらどうする?」と八橋さんに問いかける場面がある(1巻 p179)。そこで考えたのが、三店方式を猥褻物の頒布に応用できないかということだ。もっとも普通のAVは既に脱法化されているから、ここでは無修正のものを考える。また、簡単のため、動画ではなく画像を考えよう。無修正の猥褻画像の販売に、三店方式の「無関係を装う」をいうエッセンスを適用すると次のようになる。
1. 猥褻画像の販売店は、猥褻画像を特定のアルゴリズムに従って変換し、一見猥褻でない画像にする。
2. 客は、その一見猥褻でない画像を購入する。
3. 猥褻画像の販売店は、画像を逆変換するアルゴリズムを別の店に提供する。
4. その別の店は、画像を逆変換するアルゴリズムを実装し、画像編集ソフトなどの名目で2.の客に売る。
5. 客は「画像編集ソフト」を「一見猥褻でない画像」に適用する。すると、不思議なことに、無修正の猥褻画像が得られる。
変換の流れをもっと複雑にすれば、猥褻画像ロンダリングができるだろう。動画に関しても、画像群と音声に分ければ同じ販売方式を使うことができる。なお、同じ違法な猥褻物でも、単純所持が禁止されている児童ポルノには適用できない。更にいえば、どうやらインターネット上では無修正の猥褻動画もほとんど脱法化されているも同然らしい。結局、この考えの意味も薄そうだ。
何か他にアイデアはあるだろうか?自力ではこれ以上思いつかない(もし思いついたら教えてほしい(*1))。色々悪いことを考えてみたが、どうにも難しそうだ。とはいえ、別に悪いことを実行したいわけでは全くない(*2)ため、簡単には悪巧みができないというのは純粋に良いこと(*3)である。
(*1)性的なものに限らない。しかし、今回性的な犯罪に絞って考えたのは、直接の被害者がいない犯罪("被害者なき犯罪")だからというのが大きい。
(*2)パチンコの三店方式自体好意的に見ていない。これが取り締まれないのならば、法律を改正すべきだろう。
(*3)そもそも売春を取り締まることの妥当性が云々などといった話を抜きにすれば。日本では違法なこともオランダでは合法であるし、違法だが正義の行動もあるだろう。法律に従っていれば善で法律に従わなければ悪というものでもないのは承知しているが、私の文章力の限界によりこのような書き方となってしまった。
0 件のコメント:
コメントを投稿