2020年5月8日金曜日

下劣な発言が炎上する社会

先日、お笑い芸人・ナイティナイン岡村の発言が炎上するという出来事があった。

岡村隆史「お金を稼がないと苦しい女性が風俗にくることは楽しみ」異常な発言で撤回すべき【追記あり】

岡村氏の発言は、「COVID-19が流行ることにより、困窮した美人が性風俗業で働くようになることに期待している」という趣旨のものだ。これがいかに下劣で異常な発言であるかは上記の記事で述べられているが、私がここで注目したいのは、彼の発言が下劣で異常なものであるがゆえに、えげつないブラックジョークとして捉えるとかなり面白いという点である。

私は時々ブラックジョークを言うことがある。たとえば、授業の単位を落とした友達に対して「おめでとう!!」と声をかけるといったものだ。これは人の神経をあからさまに逆撫でする発言であり、「このクズめ」とツッコまれることによってボケとして完成するわけである。
生きていく上では、つらいことがたくさんある。もし、つらい思いをしているのが自分一人であれば、そんなのやっていけないだろう。だから、他にも誰か苦しんでいてほしいと我々は心のどこかで思ってしまう。この病が悪化していけば、他人が不幸になるところを見たい、不幸な他人を嘲笑いたい、不幸な目に遭う他人を安全地帯から観察して下には下がいると安心したい、という具合に進行していく。他人の不幸は快楽なのだ。
だが、他人の不幸を面白がることは完全に倫理に反しており、下劣極まりないことである。だから普通の人は「他人の不幸は快楽だ」というホンネを表に出さない。ホンネを出すのは異常なことだ。そして異常なことは面白い。下劣で不謹慎なことを軽い口ぶりでさらりと言う、この異常性を笑うのがブラックジョークの基本形だと私は思う。

岡村発言はブラックジョークとしてよくできている。「美人と性交渉したい」という、男性ならばほとんど誰にでもあるような動物的欲求をくすぐることで、タブーを破る快楽に性というスパイスを加えているところがまず素晴らしい。男性の性欲のどうしようもない気持ち悪さが滲み出ていてポイントが高い。また、発言の異常度も極めてハイレベルだ。私は、「美人の女性が性風俗で働くことを余儀なくされるだろう」なんて言われるまで思いつきもしなかった。彼が生粋のクズであることを伺わせる、たくましい発想力に感服したものである。
そして、これが搾取という社会問題を題材にした発言であるのも、ボーナスポイントの加算につながった。これは、「女性が搾取されている」という普段あまり直視されない社会問題をあぶり出す発言である。こうした問題に気がついたとき、聖人であれば女性の就労支援などの活動を始めるだろう。しかしながら、多くの人はそうした社会問題に見てみぬふりを決め込んでいる。貧困、差別、環境問題など、現代社会は様々な問題を抱えている。そして、財産を寄付したり、NPOで支援活動を行ったりなど、自分にもやれることはあるにも関わらず、私はそんなことはしていない。それは、自分のことで手一杯だからだ。やるべきことをやれない自分の無力さ、聖人になれない自分の至らなさに対して、私はただそれを嘆き、乾いた笑いを送ることしかできない。岡村発言を読んだときも、私は女性の搾取構造を認識していながらも改善に向けて何もできていない自分自身に対して乾いた笑いがこぼれ出た。この「乾いた笑い」も、ブラックジョークとしての面白さの一部であるといえるだろう。

このように岡村発言は優れたブラックジョークになっているわけであるが、恐ろしいのが、この発言がその下劣さゆえに炎上したという事実である。岡村氏が本心からこう発言したのであれば、炎上も仕方ないのかもしれない。だが、私はより刺激的でパンチの効いたブラックジョークを作るために、自分の下劣さを頻繁に盛る。このSNS時代では、発言の一部が切り取られて拡散されるというのは日常茶飯事である。こうなると、私とていつ炎上してしまうかわからない。
人間はエゴイズムに満ちた醜く下等な生物であり、その醜悪さはかねてより文学の題材にもなってきた。むしろその醜さにこそ人間らしさが詰まっているとの見方もあろう。岡村発言は確かに下劣で唾棄されるべきものであるが、だからといって撤回すべきだとは思わない。もし内輪に向けたブラックジョークでさえ文脈を漂白されて炎上するようになったなら、あらゆるエゴイスティックでどす黒い欲望は全く表に出せなくなる。それは人間をいびつに理想化する、どこか不健全なディストピアではないだろうか。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

はじめまして。福井市在住の大嶋昌治(おおしままさはる)と言います。聖書預言を伝える活動をしています。

間もなく、エゼキエル書38章に書かれている通り、ロシア・トルコ・イラン・スーダン・リビアが、イスラエルを攻撃します。そして、マタイの福音書24章に書かれている通り、世界中からクリスチャンが消えます。その前に、キリストに悔い改めて下さい。2020年を悔い改めの年にしてください。携挙に取り残された後のセカンドチャンスは、黙示録14章に書かれています。

K. 如才 さんのコメント...

了解です。