筋肉がなくひょろひょろの肉体をどうにかしようと思い始めて5年ほど経った。その間、腕立て伏せを始めたことは一度や二度のことではない。腕立て伏せを二日でやめたことも一度や二度のことではない。
トレーニングを続けるのは難しい。トレーニングはきついし、単調で、それ自体が取り立てて面白いものでもないからだ。そのあたりのモチベーションをうまく維持してくれるゲームが、Switchで発売された「リングフィットアドベンチャー」だ。本作は昨年秋の発売後ロングヒットし、発売から一年が経とうとしているにも関わらず未だに品薄が続いているのだが、五月ごろたまたま公式オンラインストアで見かけて運よく購入できたのだ。これが思った以上に面白く、今も継続できている。今回は本作の優れているところを紹介しよう。
・アドベンチャーモードによるトレーニングの動機付け
リングフィットアドベンチャーは、一言でいえば「トレーニングによって敵を攻撃してストーリーを進めていくゲーム」である。トレーニングを重ねることによってストーリーが展開され、様々なアイテムやお金が手に入り、主人公の能力も上がっていく。ストーリーが格別面白いわけではないし、ゲームとしての戦略性も高くはないが、トレーニングをすればするほど経験値がたまりレベルが上がっていくのは黙々と一人でトレーニングをするのより達成感があって遥かに楽しい。
・豊富かつ良質なトレーニング
トレーニングメニューは40種類以上収録されているそうだ。いずれも体の動きを検知して成功/失敗を判定してくれるようになっている。判定はしっかりしていて、よく作り込まれていると思う。また、運動負荷は30段階で選べる。23にしているが、私にとっては10分で汗だくになるくらいにキツい。幅広い層の人が遊べるように工夫されていると思う。
トレーニングは最初から全てを選べるわけではなく、ゲームを進めると少しずつ解禁されていく。これもモチベーションの維持に役立っている。
・回数の記録/運動強度のコントロール
収録されているものの中には、プランクやスクワットなど、このゲームを買わなくても一人でできそうなものも含まれている。それならテレビでも見ながら一人でスクワットした方がいいのではないかと思っていたが、それは違った。
まず、どのトレーニングを何回行ったかを自動で記録してくれるのが大きい。数字が蓄積されていくのが見られると満足感が違う。また、運動の強度を一定にコントロールしてくれる役割もある。スクワットならば足の角度や曲げた時間を測ってくれて、それで成功/失敗を判定してくれるのだ。運動負荷を高めれば長時間曲げさせられるようになる。つまり、同じ運動負荷のスクワットを楽にできるようになったなら、それは筋肉がついたということを意味しているのだ。このように、リングフィットアドベンチャーには自分の成長が実感しやすくしてくれる効果もある。
・爽快感のある演出
私がリングフィットアドベンチャーで最も褒めたいと思うのは演出である。コースの中での移動はジョギングで行うのだが、早く足を動かすと風を切るようなエフェクトが追加され、周囲の風景も草原から川を渡って沼地になるという具合にダイナミックに移り変わっていく。この演出はスピード感があり、車がうるさく変わりばえしない家の近くの道を私の遅い足でちんたら走っているのよりも爽快感がある。
トレーニングの際の効果音も素晴らしい。足を曲げ続けたあと伸ばすというスクワットを例にとると、足を曲げ続けている間はグーッとためるような音が鳴り、足を伸ばすとジャキンと小気味のいい攻撃SEが鳴る。これが自分の感覚と見事に呼応していて、トレーニングしていて心地いいのだ。そもそもトレーニング自体キツい中に幾ばくかの爽快感があるものだが、この演出はその快感を3割増しにしてくれていると思う。
このように、「リングフィットアドベンチャー」は単純にトレーニングをさせるだけでなく、しっかりとゲームである意味を持った作品であった。品薄で手に入れるのが難しいのが数少ない難点だが、店頭で見かけたなら是非購入をおすすめしたい良作である。
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