2019年2月15日金曜日

卒業研究

今日は卒業研究報告書を提出した。内容は液体-気体の相転移に関してである。気液相転移を導くようなモデルを用意し、これを動径分布関数を通じて議論した上で平均場近似による結果と比較した。動径分布関数は、ある一粒子に注目してその周りにある粒子の分布の度合いを距離の関数として表したものである(参考: Wikipedia)。
報告書は、最初にモデルを提示して、「このモデルの相転移を知りたい→平均場近似で議論→平均場近似は不十分→その不十分さを克服するため動径分布関数を使った理論を用意→計算→平均場近似と比較」という流れで書いた。しかしこれは完全に後付けである。まず最初にあったのはアニメゆゆ式3話の「水ってなに?」だ。確かに水はたぷたぷぴちゃぴちゃしていて不思議である。そこで液体の本質とは何だろうと思い、液体の本質が学べそうな名前の「液体論」の教科書を読み進めていくことになった。
そうこうしているうちに、統計力学Iの授業で気液相転移を導くモデルが登場した。剛体球に有限深さの井戸型引力相互作用を導入したモデル[1]である。この授業で登場したのが平均場近似による議論であった。そして、授業を聞いていて、これはちょうど動径分布関数でより精密に解けそうなモデルになっているなと感じた。つまり、モデルの相転移を知ろうと思って液体論を勉強したのではなく、液体論という手法で解けそうな問題を探してきて、それがたまたま気液相転移だったというわけである。私は本来2年生のうちに学んでおくべき基本的な授業である統計力学Iを最後の最後まで残していたわけだが、これは結果的には正解であった。2年生のときにこの話を聞いても何も思わなかったであろう。チャンスは準備された心に降り立つのである。
ともかく、私はこのモデルを解くことを心に決めた。これが12月末の出来事である。相転移の話になったのは偶然であったが、これは当初の目的にも叶うものであった。というのも、これはパラメータを変えるだけで液体状態と気体状態の両方を生み出せるモデルになっているわけである。従って、この設定を使えば1つのモデルで気体の動径分布関数と液体の動径分布関数の両方を生み出すことができる。そこでこの2つの動径分布関数を眺めれば、その差分から液体の本質が立ち現れてくるのではないかと思われたのだ。
そうして計算を進めたことで、無事液体論に基づく手法によっても相転移を導くことができた。そうして手元には二種類の動径分布関数が得られた。見比べてみたが、そこから液体らしさは何も感じることはできなかった。
密度をρ=0.7に固定して、β=0.001の高温条件(緑)とβ=0.7の低温条件(紫)で動径分布関数をプロットしたもの。私の研究によれば、この間に相転移が起こっているはずである。
形は確かに全然違う。しかし気体はしゃびしゃびで液体はたぷたぷしているという手応えはここからは伝わってこない。てっきり液体の方が相関長が長くなっているものだと思っていたがそうでもないらしい。あの水の感覚は、分子レベルには一体どういう形で現れているのだろうか。水は異常な物質だとよく聞くが、そういう特異性を考慮してモデルを設定するべきなのだろうか......?

液体まとめ
よくわからない

参考文献
[1]Tago, Y (1974). Equation of state of the square-well fluid. J. Chem. Phys. 60, 1528; https://doi.org/10.1063/1.1681226

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