2018年3月9日金曜日

振り返り: 3Aセメスターの授業

月3: 反応動力学
反応速度論である。分子の衝突の古典的なモデルや、量子化学を考慮したモデルで化学反応の速度を考察した。授業には毎回4人くらいしかいなかった。授業スピードが遅めで、試験も易しく、3Aの癒し枠の1つだった。

月4: 電磁気学
資料だけもらって授業は聞かなかった。単位が来てよかった。

月5: 数理生物学
統合自然科学科ならではの授業の一つである。数理生物学は、生物の個体数の変動を数式で記述する学問を指すことが多いが、この授業の数理生物学は生物を説明する理論モデルの体系だった。具体的には、チューリングパターン、Hodgkin–Huxley方程式(神経細胞を記述する微分方程式系)、生命の起源と進化などを扱った。授業は正直よくわからなかったが、網羅的に学ぶことが難しい分野なので、貰える資料を読んでいくのは面白かった。

火2: 量子力学III
今学期で最も難しかった。Rabi振動、時間に依存する摂動論、散乱問題、電磁場の量子化、第二量子化を扱っていた。量子力学III以前にそもそも僕は量子力学IIが分かっておらず、わからないのも当然であった。それくらい分かっていないのに優が来たのだから余計分からない授業だった。

火3-5, 水3-5: 数理科学演習I
van der Pol方程式、Hodgkin–Huxley方程式、ローレンツ方程式、有限サイズ二次元イジング模型などをシミュレーションして、力学系・カオスやモンテカルロ法の手法を身につける授業だった。私はシミュレーションにはC言語を用いた。課題が一通り終わった後は、自由研究として、非弾性衝突を表す微分方程式のシミュレーションを行った。
延々プログラミングをするのはかなり精神的に疲れるもので、特に私はプログラミングに疎く、課題の進度が遅い方で、割と遅くまで残っていたのでしんどかった。今学期で最も心がつらい授業だった。

水1: 数理科学セミナーII
制御理論を解説したReview論文を輪読するセミナーだった。英文で読みづらく、誤植が多く、ラプラス変換のバックグラウンドもなかったので大変だった。最初は本当に訳が分からず、適当にごまかしながら危うい説明をしていたが、セメスター序~中盤ごろに日本語の制御理論の入門書を一冊読み終えてようやく何を言っているのかが分かるようになった。それでも大変なのは相変わらずで、分量内容ともに苦しめられた。私は白板だけでなくスライドも使って発表していたので予習に余計時間がかった。先生も制御理論の専門家ではないため、先生も学生四人も誰も言っていることが理解できず全員首を傾げたまま流したこともあった。

水2: バイオイメージング
細胞の中で起こる現象をいかにして可視化するか、そして可視化した画像からいかにして定量的な情報を引き出すか、という内容だった。可視化のための標識の設計に物理学の知識が、情報の引き出しに数学の知識が活かされていることが分かったのは興味深かった。今学期で一番緩い授業だったので、資料にさっと目を通して後は主にセミナーの予習に充てていた。

木1: 構造幾何学
位相力学系の授業である。位相空間の上で繰り返し写像をはたらかせたらどうなるかということを習った。より分析しやすい同型な位相力学系を構成して考える手法や、位相力学系のゼータ関数やエントロピーなどについて学んだ。試験は前バラシがあった上に7題中2題選択と、非常に易しかった。
この授業は先生が最も印象的だった。かなり変な人で、一部からカルト的な人気があった。「あンの、そンの」を連発し、服装は体操前のような短パンあるいはタートルネックで、リュックはよれよれで、漢字の間違いが多かった。こぼれ話もシュールで、突然北欧のスパイを語り始めたり、「羽衣チョークはチョーク界のロールスロイス」「ζ関数を神と崇め奉っている危ない人達がいて、その人たちの前で引数をs以外の文字で書くと逆鱗に触れる」などと言ったりとなんだかよく分からないものばかりだった。前バラシについても、「試験前には予想問題を作って配ろうかと思っています」と言っており、自分で自分の問題を予想するのか(しかも完全に的中させた)と困惑したものだった。とにかく思い出の多い授業であった。

木2: 構造幾何学演習
構造幾何学に関する問題を解いた。初めは何十人もいて人が多かったが、授業が進むにつれどんどん人が減っていった。それもそのはずで、配られる問題が授業よりも遥か先の内容をやっていて、問題の意味が理解しがたかったのだった。最終的に授業で全く扱っていないエルゴード定理の証明問題になっていた。最後の方は4人くらいしか解いていなかった。すごい人たちはすごい問題を解いていたが、易しい問題も残してくれていたので、僕は地道に出席して易しい問題を毎回解いていた。

木4: 実解析学II
フーリエ解析の授業である。トーラス上の関数から始めて、ℝ上の関数、そして超関数のフーリエ変換を扱った。内容は難しかったが、説明は明快で、分からないなりに得るものの多い授業だった。超関数のアイデアの面白さや、ルベーグ積分の有用性が感じられた。特に、関数の遠方での減衰の速さとフーリエ変換の先の滑らかさが関係しているという話が面白かった。
この先生も(構造幾何学の先生には負けるが)独特な人で、寡黙な雰囲気から「関数が(両手を狭めるジェスチャーをしつつ)こうジューッと縮んでいく」「(色々定理はあるのだが、それらを紹介していくと)魔界の様相を呈してくるのでこれくらいで」などと印象的な言葉が多かった。
試験で評価のはずが、人が少ないからという理由でレポート評価になった。レポートは4題しかなく概ね易しかった。

木5: 実解析学演習II
実解析学IIの授業に関連する問題を解いた。難しかった。間違えたところを静かに指摘されるのがちょっと怖かった。

金2: 数理代数学
群と群の表現についての授業だった。群の指標がまあまあ分かった。説明はわかりやすかったが、表現について書かれた本は少なく、進度の速さに苦労した。特にリー環の表現は消化不良である。期末レポートは難しかった。
土曜日にメールで質問を送ったらものの数分で返事が返ってきて驚いた。

金3: 数理代数学演習
数理代数学に関連する問題を解いた。1問3点+ボーナス20点のシステムで、他の演習よりも多くの問題を解かねばならず、統合自然の数学にしてはしっかり問題を解かせる授業だった。おかげで授業の理解が深まった。これをやっていなければ数理代数学のレポートはほとんど投げ出していただろう。
TAの人からたまにニンニクの臭いがした。その日は多分千里眼(※ラーメン店の名前)に行っていたのだろう。

金4: 有機化学I
有機分子の構造から、基本的な反応、分子間相互作用までを習った。先生はベシクルなどの構成を専門としている方で、例えば異性体がテーマの回なら生物の鏡像異性体の選択性の話をするなど、今習っている内容が生命の研究とどう関係するのかについて語ってくださり、これが毎回楽しかった。
ただこのような試験範囲外のことまでノンストップの早口でたくさん喋るため授業のスライドの枚数が非常に多く、105分の授業に109枚のスライドがあった回もあった。先生が終盤風邪を引いてからは50~60枚くらいにまで減ったものの、やはり普通に聞いていたらとても頭に入らないので、興味のあるトピックス以外は話を聞かずに自習していた。

金5: 量子力学演習II
水素原子、角運動量、摂動論についての問題を解いた。水素原子の問題では、物理数学IIで習ったもののさっぱり分かっていなかった合流型超幾何関数の意味がやっと分かってスッキリした。角運動量はいまだに分からない。

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