2018年9月16日日曜日

川の流れのように

「書くことが思いつかない」で、文章に表現される対象を"流れ"と書いたが、これはなかなかしっくりくる呼び方だと思った。水の流れが繋がったり分かれたりするように、思考の流れにも合流や分流がある。それを脚注やかっこがきを使ってなんとか一次元的な文章に落とし込むのだが、これには毎回四苦八苦させられる。田崎先生の「統計力学I, II」からの影響もあり、脚注やかっこがきを多用しがちになるのだが、どうすればわかりやすくなるのかはいまだによくわからない。
このように、思考というのは誠に川の流れのようである。「川の流れのように」といえば、アニメ「ヒナまつり」の第10話である。「ヒナまつり」は、超能力少女ヒナを主人公としたギャグアニメだ。7月ごろ「なまはげ」CMで興味を持って見始めた。主人公のヒナがクールボケとでもいうべき良い性格をしていて、すっかりはまってしまった。はまってしまったため、駒場の東大生協で原作1-3巻を購入した。私が購入したときは1-3巻しか置いていなかったのに、私が購入した途端に東大生協は「ヒナまつり」全巻を並べ始めた。東大生協はわかりやすいものだ。以前にも、「プリニウス」1巻を予約注文した際、それまで並んでいなかったのに途端に書棚に「プリニウス」全巻が並び始めたことがあった。その後も新刊が出るたびに「プリニウス」が入っている様子を見ると、私の他にも売れているのかもしれない(私は1巻しか買っていない)。みんなも東大生に布教したい本があれば積極的に生協で買っていくと良いと思う。
ところで、川といえば、世界最長の河川はナイル川である。アフリカといえば、最近アディスアベバにはまっている。アディスアベバとはエチオピアの首都である。アディスアベバにはまっているといっても、アディスアベバに行ったことはない。ただ、独り言で頻繁にアディスアベバと言っているだけである。これは、元を辿ればアニメ「こみっくがーるず」の影響である。「こみっくがーるず」は漫画家を目指す女子高生たちを描いた日常系アニメだ。これも主人公の「かおす」の卑屈さとひたむきさが同居する性格が良くてはまってしまった。その主人公が慌てたときに発する口癖が「あばばばば」である。「こみっくがーるず」を見ているうちに、この「あばばばば」が癖になってきて、自分の身に慌ているようなことが起こると、かおす先生の「あばばばば」が脳内再生されるようになってきた。それを繰り返しているうちに、頭の中で訛ってきたのか、いつの間にかアディスアベバに変化してしまった。そして元々の文脈から離れ、脈絡なくアディスアベバと言ってしまうようにまでなってしまったのである。ある日は朝起きるとアディスアベバと言い(これは、翻訳すれば「意識を再び取り戻した」の意味である)、別の日は包丁で指に切り傷を作ってしまいアディスアベバと言う(これは、翻訳すれば「絆創膏はどこだろう」の意味である)、という具合である。

この文章は流れといっても飛躍だらけだ。川の水もダムの放水時には飛んでいる。それと同じようなものである。読者の方も包丁の使い方には気をつけてほしい。

2018年9月7日金曜日

書くことが思いつかない

友人にブログを更新するように言われたものの、書くことが思いつかない。

書くことがないというのはどういう状態なのだろうか。本当に何も思わず、何もせずに1日を過ごしたわけではない。ただ、その思考や行動はあくまで断片的なものであって、まとまった文章にならないのだ。例えば「起きた。眠い」といったツイートをすることがある。これはこれ自身で完結していて、なんらかの意味で特別な一日の始まりであるというわけでもない限り、それ以上の文章要素と相互作用して文脈を生み出すことがない。断片の羅列では文章にならない。全体が部分の総和でしかないのだ。文章が文章たりえるには、文章を貫く、文章の"意味"、"内容"、"主題"、"核"、"流れ"が必要である。以下では、この、文脈をつなぎ合わせたものを流れと呼ぶ。
何も書くことが思いつかない一日というのは、そうした(長めの)文章として落とし込まれるべき流れを見出したり、あるいは思い出したりすることができなかった一日である。文章の上では、流れ(の原型)が先にあって、流れと相互作用しない思考や行動は捨象されているわけである。
ツイートは断片的な思考と行動の羅列にすぎない。断片的な思考や行動をするのは容易である。しかし、流れを中心として構造化された思考や行動は、なかなかできない。できていても気づけなかったり、うまく流れを切り出すことができなかったりする。思考や行動だけで文章を作ることができるわけではなく、執筆作業においては流れを作る意味付けのプロセスが重要な役割を演じる。ツイートは毎日できてもブログは書けないというのは、そういう理屈である。(もちろん時間の問題もある。部分と全体を往復して書き進めないとならないため、構想時の予定よりも書くのに時間がかかってしまうことが多い。)

ところで、「文章が文章たりえるには、文章を貫く流れが必要である」と言ったが、これは生命と似ていると思う。生命も、生命全体を貫く"何か"によって、構成要素の総和以上の"何か"を生み出しているように見える。生命体である私から文章が生み出されるというのは、それ自体興味深い。

2018年9月3日月曜日

振り返り: 4Sセメスターの授業

授業のコマ数を減らしてその分を院試勉強に充てようと思っていたセメスターだったが、どういうわけか結局院試勉強は8月になるまでほとんどしなかった。一体どうしてこんな結果になってしまったのだろうか。それはともかく、いつもの振り返りをしておく。

月3: カオス
力学系のカオスを学ぶ。授業はだいぶわけがわからなかったが、数理科学演習Iの知識でどうにかレポートが書けた。レポートの採点はかなり甘いと思った。

月4: 確率統計II
数学科の確率統計である。
様々な確率分布とその性質がずらずらと紹介されてきたあたりで単調さを感じてやる気をなくしてしまい、16号館から数理病棟への移動が面倒なのも相まって出席するのをやめてしまった。その結果持ち込み可の試験にも関わらず単位を落とした。
私には理解しかねるタイミングで授業中に笑い声を漏らす数学科の学生たち(一人ではない)がちょっと怖かった。数学科のギャグセンスが高度すぎて我々凡俗には通じないということか。

月5: 生物物理学I/II (ターム制)
生物物理学Iではタンパク質の物性とフォールディングについて、IIではタンパク質分子マシンの力学と熱力学について学んだ。
あまり授業を聞かずセミナーの予習などに充てていた。試験は易しい。

火2: 分子生物学
もともと現象数理学の予定だったが、あまりの難しさにこちらに変更した。授業に行ってはみたものの、やはり内容が理解できずすぐにサボりがちになった。同じくサボり気味だったおるふぇ君にも協力してもらって資料をかき集め、何をやっているのかは若干把握したものの、それだけで試験が解けるはずもなく当然不可......のはずだったが、救済のレポートにより温情の可と相成った。このおかげで生命コースのサブプログラムが取れるため、可は可でも大きい可である。

火3-5, 水3-5: 物質科学実験III
分子分光学の研究室で、NO分子にレーザーを当ててできる励起状態を調べる実験をするはずだったが、研究室側のトラブル、教員の多忙さ、私のサボり癖etcによって、結果的に実験はあまり進展しなかった。結局やったことは、毎週1回のセミナーに出席したのと、論文を読んでその内容をセミナーで1回報告したのと、レーザーを当てられたNO分子の様子を計算機でシミュレートするプログラムを途中まで書いて、その進捗具合を報告したことである。
指導教員が大変優しく、質問をすると「質問してくれてありがとう」と言ってくれたり、それほどでもない発表でも褒めてくれたりしてくれて、心が乾きがちな大学生活へ潤いを与えてくれたのはとても良かった。先生は見ている限り事務仕事をたくさんやらされているようで(その地位につくことも急遽決まったようだった)、不憫だった。

水2: 統計力学II
昨年のリベンジを果たすため履修した。今年度は授業には一切出席しなかったが、無事良の成績をいただいた。しかし、1年かけて勉強しておいて、優上はともかく優も取れないのか......。
ちなみに、この先生は変人として知られている。昨年は試験中に黒板で授業内容の補足を始めていたが、今年はなかった。

木2: 情報と計算の物理
通信理論、計算量理論の問題の統計力学的解析を扱う授業だった。よくわかったとは言い難いが、ランダムな系の典型的性質を取り出す上で統計力学的考え方は強力なツールなのだなあと底の浅い感想を抱いた。活発な質疑応答は面白かったが、どうもそれで授業計画が若干狂ったのか、進みが早すぎる箇所があった。ついていけずつらかった。
なお、重厚な授業内容の割にレポートは易しめという、統合自然科学科のいつものパターンの授業である。

木4: 確率統計I
院生に見紛うほど若い先生が担当だった。初回授業は雰囲気がゆるく、最後までこのペースで進むのかと思いきや、次第に加速していき思考が追いつかない厳しい展開となってしまった。とはいえ例が豊富で、数学科の確率統計IIよりわかりやすかったと思う。
試験の出来は正直よくなかったと思うが、実質下駄のレポート点で底上げされた感がある。

金2: 数理科学セミナーIII
主にpHなどがトリガーとなって細胞質が「固まる」現象に焦点を当て、関連する論文を4つ読んだ。2回ほど実験とその解析に充てた回もあり、ユニークで面白いセミナーだった。それにしても論文4つはきつい。セミナーでは他人の担当箇所まで予習するのが理想だが、現実は......。

金3: 量子力学特論
純粋状態統計力学の理論の紹介だった。中盤で全く意味がわからなくなり撤退。今年は非平衡ではないとは。

金4: バイオインフォマティクス
今まで受けてきた中でも最高クラスのゆるさを誇る凄まじくゆるい授業だった。休講が2回、代講等で試験範囲外の内容が2回、そして繰上げ試験が1回で、とどめとばかりに毎回45分ほど早く終わる。この調子で試験に何を出すのだろうと訝しんでいたが、やはりというべきか、試験も非常に易しかった(語句説明、系統樹作成、配列スコアの計算が出た。スコアの計算とは、単なる二桁の足し算である)。授業中はずっとセミナーの予習をしていた。

現時点での単位数は、99(+前期課程分79)である。単位が降ってくるので、非本質的な勉強法をしているなあとは思いつつも、ついつい集めてしまう。そうでもなかったら、もっとずっと私は勉強しなかっただろうなと感じている。